仲良しの先輩から、突如URLが送られてきた。
近畿地方のある場所について
開いてみると、”情報をお持ちの方はご連絡ください”という文言。
どうやらこのサイトは掲示板のような形式で、ある場所にまつわる怪異や不可解な出来事を集めているようだった。1ページにひとつずつ記事が掲載されていて、その土地で起きた行方不明事件や心霊現象が書かれている。記事の切り抜き、張り紙のような文章、インタビューの文字起こし。どれも短い文章なのに、感じる大きな異質さ。「場所」という共通点で集められていたはずだが、だんだんと「同じ怪異」を体験している点もみえてくる。「なにこの場所!絶対行きたくないんだけど。」とぞわっとして、思わず検索した。そこでようやく気が付いた、この話がフィクションであることに。
モキュメンタリーという技法
モキュメンタリー(英: mockumentary)は、映画やテレビ番組のジャンルの1つで、フィクションを、ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法である。
雑誌の切り抜き、掲示板の書き込み、インタビューの文字データ。これらには一つの共通点がある。すべて第三者の視点で書かれている、ということだ。当事者の心情が抜けているため、読み手は”事実だけが並ぶ資料”をひたすら目にすることになる。事件の背景や真相は読者が補完しなければならない。掲示板の管理人が一応”語り手”というポジションではあるものの、たまに出てきては状況整理をするだけで、人物像はほとんど見えてこない。
無知が連れてきた恐怖
この作品、実はカクヨムという小説投稿サイトで公開されている小説で、本屋でも単行本として手に入る。でも私は、先輩から送られてきたリンクからそのまま読み始めたため、しばらくの間フィクションと気づかなかった。「カクヨムなんて小説の投稿先ではないか!」と思われるのも当然。恥ずかしながらそのときは知らなかった。本気の震えで読んでいた。
土地に残る穢れ
この作品のテーマは小説『残穢』に近い。”土地にまつわる怪異”がじわじわと連鎖していく構成になっている。大きく異なる点といえば、呪われてしまう範囲だろう。『残穢』では”この家に住んだ人”が呪われる、一方この作品では、”この土地一帯に足を踏み入れた人”が呪われる。この一件に関わった人はもれなく死。「読むのもアウトなのでは…?」と恐れながら読んでいた(読むのはやめない)。先輩が私にこの怖さを強要したように、私も3人くらいにURLをおくりつけた。
2025夏に映画化
そんな”呪われた小説”が、2025夏に映画公開されるらしい。
わがままを言うと、無名の俳優でやってほしかった。有名な俳優が出ているホラーは、裏を返せばその人が死ぬ可能性が低く、比較的安心した気持ちで見れてしまう。
個人的に理想のモキュメンタリーはタイ映画『女神の継承』。取材班の顔も映らず、インタビュー形式で事実だけが提示される。観客が自分で”咀嚼”しなければならないため、物語の真実味がより高まる。なにより怖い。
今回の映画化作品がどこまで攻めてくるかはわからないけれど、小説とは違う切り口になるであろう映画も楽しみに思う。今年の夏も涼しくなれそうだ。
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