大谷翔平の「イライラとの向き合い方」がSNSで回ってくる。
「イラっときたら負け。」
何かに怒るとき、自分の大切にしていることを蔑ろにされたように感じるから怒る、という考え方。
遅刻する人にイラっとするのは、自分が時間を守るからという例が挙げられている。
大谷翔平が放つ言葉はかつての孔子のように扱われている。
普段あまりイライラしないタチであるが、猛烈に怒りが湧いた出来事があった。そこで、自分の大切にしている部分が見えたと同時に少し自分のことが嫌になる部分も見えてしまった。
私は社会人3年目の新人。ぺーぺーなりに、自分でもつ仕事も増えてきて、その日は部内で月に一回の進捗報告があった。担当は持ち回りで回していて、今月は私のチーム。今月はいい実験データが取れたから、はりきって資料作りをして、いつもはしない発表練習までして、念には念をと準備をしていた。
当日、事は順調に進み無事発表が終わった。もちろん想定質問も用意していたし、質疑応答の時間もどんとこいという勢いだった。
だが、私が回答を発する前に口を開くのはひとつ上の先輩だった。先輩はとっても面倒見が良くて優しい人だ。なるべく人の影に隠れたい私とは正反対の性格の持ち主だ。今回もきっと助け舟のつもりで答えてくれていたのだと思う。一年前なら嬉しかった。質問に答えられなくて困っていたから。でも、もう違う。ひとりで資料を作れるようになって、ひとりで実験を1からして、自分が1番この結果のことをわかっているのだ。なにか、手柄を取られたように感じた。
ここで、自分の自我の強さに気づいてしまった。普段は前に立ちたがらないくせに、ここぞとばかりに目立ちたがる。先輩がこの話をきいたら「前に出たいのか出たくないのかどっちなんだい!」となるだろう。だが、“任せられている”という責任をもって準備したものは、他の人に渡したくはない。
これが社歴10年の先輩に言われたらまた訳が違うだろう。「自分の言ったことに間違いがあったのかな。」と素直に先輩の補足説明を受け入れられたと思う。一年違いの先輩ということあって、どうしても戦友として見てしまう。それに、先輩より目立つにはこういう機会しかないのだ。
ここで、思った以上に負けず嫌いなことにも気づいてしまった。先輩は社交的で、営業とのやり取りが主の仕事をしている。対応個数が成果として見えやすい先輩に対して、自分が評価されるためには何ができるだろう、と考えて至ったのが“たくさん実験”だった。同じフィールドでは戦えないから、別軸で自分の強みを出そうとした実験だったからこそ思い入れが強かった。
大谷翔平の"イラっときたら負け"と、"ここで強く出られなければ負け"というせめぎ合いに、私はいつも悩まされる。
けれど、人間関係が第一な私は中途半端に悩みを放棄して、「今日もありがとうございました。」と先輩に笑いかけるのだった。