最近の日本は暑すぎる。いや、最近の地球と言うべきか。
クーラーが人命措置装置になっている今、人間が外を闊歩できる日もあとわずかかもしれない。
猛暑が続くが、猛暑以上の言葉があった方がいいのではないか。“空前絶後の猛暑”とか?“激酷猛暑”とか?…いずれにせよ、センスがない。
そんな猛暑日に、私は猛烈に仕事をしていた。それはもう、一生懸命に、手足を止める間もなく。どうしてか、ものすごく捗ったのだ。次から次へとやりたいことが浮かんできて、その浮かんだことを全てする実行力も持ち合わせていた。
なんだか今日は冴えているなと。
だが、同時に頭も痛かった。偏頭痛で感じる場所とは違う部分でズキズキと、思い出したかのように痛むのだ。痛いけれど、休息もいらないくらい仕事を進めたかった。何かに追われている訳ではないのに、今日は調子良いからやりたい、こんな感情になったことは初めてだった。
私はその冴えた頭で映画『LUCY』の記憶を思い起こしていた。
『LUCY』とは、“人類の脳は10%しか機能していない”をキャッチコピーとした、スカーレットヨハンソンが主演を演じるSF映画だ。ある物質が主人公の体内に漏出してしまった作用で頭脳拡張が始まる。拡張20%で言語を自在に操り、40%で見えない電波をコントロール。やがて100%に近づくにつれ、人間を超えた存在になっていくのだが、まあそんな映画を思い出していた。
そして思った、私の脳も10%を超えたのではないかと。効率よく動くための道筋があまりにも見えすぎているし、エナジーがどんどん湧き上がってくる。頭が痛いのは、未開拓領域だった脳みそを使っているからではないかと。真剣に考えたのだった。

後日、私の脳みそは11%の稼働率になったことを同僚に意気揚々と話した。私の突拍子のない話をいつも真面目に聞いてくれる同僚だが、今回は話の途中で
「それ、熱中症じゃないの?」
と言われた。熱中症の可能性を1mmも考えていなかった私は「それじゃん??!!」ってなった。よくよく話を聞くと、私の脳が11%拡張したと勘違いした日、会社の中で熱中症と思われる頭痛で早く帰る人が多かったそうな。
「絶対それじゃん!!??」と確信した。私は熱中症の中、ただただ思い込みで仕事を頑張った人なだけだったようだ。
暑さで思考を司る脳みそがやられてしまったのか、『熱中症に気づけない』という、熱中症の新たな症状を発見したのであった。